「給食を残すと先生に怒られる」と子供に言われて困っていませんか?
私の息子、ハリーが最初に給食の問題にぶち当たったのは小学校2年生の時。
保育園や1年生の時は先生の励ましや教室の楽しい雰囲気もあって、給食を嫌がることはなかったです
2年生の時の担任は食べるのが遅いことを責め、思い通りに物事が進むことを望んでいる先生でした。
また、4年生の時は何事にも厳しく、器に入れた分は完食するよう求める先生でした。
(その時の給食エピソードは不登校のきっかけは私②/不登校のきっかけは私⑤)
先生によって給食への指導はどうしても異なります。こちらもいろいろと考えて相談の仕方を変えてみることで、無理に食べさせられることはなくなりました。
そこでこの記事では、先生が残すことに対して厳しい理由、先生に相談する際の書き方例を紹介します。また、どうしても食べられない場合の解決策の提案についても書いていますので、参考にしてくださいね。
お子さんが一つでも食べられるものを増やせれば、学校の給食を楽しみにしてくれますよ。
給食を残すと先生に怒られるのはなぜ?
先生は理由なく怒っているのでしょうか。限られた時間の中で給食を終わらせ、クラス全員の状況を確認するのは大変なことです。先生が厳しく言う理由として考えられることを3つ挙げてみました。
- 給食は「特別活動」の一つ
- 国際的な目標「SDGs」の取り組み
- 日本人に多いいじわる:スパイト行動
給食は特別活動で指導に含まれる
学校の給食は、子供たちに給食を提供することで学校での食育を進めるといった目的で「学校給食法」で決められています。
給食の時間には配膳や食事から社交性を身につけたり、健康的な食事のとり方を学びます。
ただ食べるだけじゃないの?
みんなと一緒に食べることで、コミュニケーションをとったり、将来も健康で過ごすための習慣を身につけるんだよ
その中で担任の先生は、食べ過ぎや食べ足りないために成長に影響のある子などへの指導をすることが決められています。
この「指導」という言葉、先生側の都合のいいように使われる場合もあります。
(先生の言う「指導」は正しかったのか?不登校エピソードはこちら)
また、片付けまでを時間内に終わらせるために「早く食べ終わる」ように言われていることが、小さな子供にとって負担になることも。
子供にとっては怒られている、怖いと感じるようなことがあるかもしれません。
こういった経験から「会食恐怖症」などの精神的な疾患を発症することもあります。
SDGsの学習と給食
今の子供たちは、SDGsと言って「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」を学んでいます。
17個ある目標の中で、給食の時間に特に関係があるのは12番の「つくる責任 つかう責任」です。
12番の目標の中には、11個の「ターゲット」と呼ばれる具体的な行動目標があります。そのうちの3つ目は
2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。
引用元:SDGs支援機構「SDGs|目標12(12.3) つくる責任つかう責任|食糧が余っているのに飢餓!?」
日本では少子化が進み、人口が13年連続で減少(※1)していますが、世界では人口が増え続けて十分に食べることができない人がたくさんいます。
その半面で料理する際の皮や種、骨などの捨てる部分、食べきれなくて捨てる分などの廃棄する食糧の量は多く、2021年の推計値は523万トン(※2)でした。
(国民一人当たりだと1日に約114g(※3):子供茶碗にちょっと多めに盛った量ほど(※4))
学校給食でも食べ残しを減らすようにするため、どうしてもできるだけ残さないように言われるのです。
給食嫌な思いをした経験からくるスパイト行動
スパイト(spite:悪意、いじわる)行動とは、「自分が損をしてもいいから人の足を引っ張る」、「自分と同じように相手も損をしろ」という心理的な行動のことを言います。
私が小学生の頃は、昼休みに嫌いなものを吐きそうになりながらも食べることを強要されている時代でした。それがあたりまえの時代だったのです。
(小児科の先生に偏食の相談した時のエピソードはこちら)
そういった「嫌なものでも無理して食べること」を経験したり、友だちが食べさせられていることがあたりまえだと学んでくると、子供に対して同じようにすることを求めるようになるのです。
「他の子たちもがんばっているから」などというのも、スパイト行動と言えるね(※5)
また、周囲に溶け込めない人を嫌い、冷たい対応をとる日本人ならではとも言えます。(※6)
出る杭は打たれるってことわざもあるよね
文部科学省発行の「食に関する指導の手引」には、偏食がある子供に対して個別に相談に乗ったり指導する方法が書かれていますが、先生が存在を知らなかったり、内容をきちんと理解していない場合があるのが現実です。
3 指導上の留意点
個別的な相談指導を行うに当たって、次の点に注意が必要です。
① 対象児童生徒の過大な重荷にならないようにすること。
文部科学省:「食に関する指導の手引」第6章、第1節ー個別的な相談指導の基本的な考え方 より
② 対象児童生徒以外からのいじめのきっかけになったりしないように、対象児童生徒の周囲の実態を踏まえた指導を行うこと。
③ 指導者として、高い倫理観とスキルをもって指導を行うこと。
④ 指導上得られた個人情報の保護を徹底すること。
⑤ 指導者側のプライバシーや個人情報の提供についても、十分注意して指導を行うこと。
⑥ 保護者を始め関係者の理解を得て、密に連携を取りながら指導を進めること。
⑦ 成果にとらわれ、対象児童生徒に過度なプレッシャーをかけないこと。
⑧ 確実に行動変容を促すことができるよう計画的に指導すること。
⑨ 安易な計画での指導は、心身の発育に支障をきたす重大な事態になる可能性があることを認識すること。
いずれにしても、子供の意思に反して無理に食べるように言うことは誰にとっても幸せではありません。
先生への相談の仕方
すぐにでも先生に相談したいとは思いますが、まずは学校での状況の確認や家で取り組めそうな内容を確認してみてください。
相談の前に家でできること
まずはあなたのお子さんがどうしたいのかを聞いてみてあげてください。
全く食べられないという時でも、以下のようなことで「できそう」なことがあるといいですね。
- においを嗅ぐだけならできる
- お箸やスプーンに乗せるだけならできる
- 1口なら挑戦できる など
普段からの食事の様子からどういったものなら食べられるのか、どの食材は全く食べられないのかをきちんと洗い出ししてみましょう。また、家でも挑戦できるメニューがあるなら試してみることも大切です。
食材アレルギーがなくても、学校からは給食の献立をもらうと思います。
通っている小学校の献立です。
右端に材料と使われている分量が書かれていて、食べられそうなものをチェックしていました。
長男ハリーは自分の気持ちや嫌なことなどは心に閉まってしまい、教えてくれませんでした…
ハリーの場合、小さい頃から自分の気持ちを表現するのが苦手でどういう状況なのかほとんどわからず。実際に教室で見聞きしているわけではないため、担任の先生からの一方的な話しか聞けません。
そこで、同じクラスにいる友だちのママに、給食の時間の状態を聞いているかを確認しました。
状況を把握のための情報収集にとどめてくださいね
どの先生に相談すればいい?
まずは担任の先生に状況を確認するため、連絡を取りましょう。
担任の先生に聞く時の連絡手段としては
- 連絡帳や連絡アプリを使う
- 電話で連絡
の2つがあげられますが、できれば書面のほうが感情的にならずに落ち着いて状況を確認できます。後々「言った言わない」とならないためにもわかる形で残すことがいいですよ。
電話でまずは話しを聞きたいという場合も、あらかじめ聞くことのリストや先生からの言葉をメモするなど残しておきましょう。
また、学校で話をする場合はお互いの理解の違いなども埋められるので、できるだけ家族2人以上で行くとよいですね。
担任の先生と何度かやり取りする上で、状況が改善しない時は
- スクールカウンセラー
- 学年主任の先生
- 管理職の先生(副校長/教頭)
- 栄養教諭の先生
- 養護教諭の先生(保健室の先生)
など他の先生に相談してみましょう。
我が家の場合、すでに給食の話は担任の先生と何度もしていました
クラスに入っている他の先生から状況を耳にしていたので、教頭先生に相談してみましたよ
スクールカウンセラーは、毎日学校へ来てくれているわけではないので、あらかじめ申し込みが必要になることが多いです。
角の立たない言い方は?
状況を確認した上で、あなたのお子さんが給食でがんばれそうなことや家庭での取り組み、学校でお願いしたいことを伝えます。
子供が目にする連絡帳に書く場合は、書き方も気を付けてくださいね。
先生を責めることのないように、子供にとって良くなるように伝えることが大切です
- 給食の時間に苦手なものが食べられず、本人もつらくて困っているようです。
苦手でも1口から挑戦していきたいので、ご配慮いただけると助かります。 - 小さい頃から食べるスピードも遅く、小食でたくさん食べられません。配膳の際に、他の子より少なめに完食できる量にしていただけるとありがたいです。
- 献立を見てがんばって挑戦できるメニューを話し合いました。
体調や気分によっては食べられないかもしれませんが、本人ががんばれるように声を掛けていただけると嬉しいです。 - 感覚過敏で給食の時間がつらいようです。食べ物の食感だけでなく、匂いなどでも気分が悪くなります。保健室や別室で食べられるよう、合理的配慮をしてくださると助かります。
お子さんと話をした上で、どうしたら給食を食べられるか?を書き添えるといいですね。
合理的配慮とは、障害のある子供が、他の子供と平等に教育を受けるために、学校側に必要な対応や変更をしてもらうことです。(→文部科学省:障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備)
味覚過敏や嗅覚過敏などの感覚過敏は、自閉症スペクトラム(ASD)の特性の一つとして挙げられています。
お子さんが発達障害でなくても、状況によっては対応してもらえる場合もあるので、学校に相談してみてください。
ハリーは感覚過敏であることは分かっていたのですが、専門家に診てもらう前だったので、本の内容をコピーして見てもらいましたよ
対応が変わらない先生の場合には?
先にあげた「スパイト行動」のように、他の子供ががんばっているから食べるように言う先生もいます。
状況が改善せず困っている場合、担任以外の先生に相談するとよいですよ。
文部科学省発行の「食に関する指導の手引」(第3章)では、栄養教諭の先生が主体となって問題解決のために他の先生と連携をとることと書かれています。
担任の先生に話をして状況が変わらない場合は、困っていることへの解決法をもらえないか聞いてみましょう。
- 食べられないものが多いので、食べられる工夫について栄養教諭の先生に相談したい
- 給食が嫌で学校を休みたいと言っているので、養護教諭の先生と話をしたい など
うちの小学校では「給食試食会」が毎年あり、アンケートに食事のことで困っていることを書いています
管理職の先生に相談するのであれば「給食の時間の見回りをしてもらえないか」、「教室での様子はどうか」など、客観的立場で確認してもらうとよいでしょう。
また、スクールカウンセラーは外部から来ている場合が多く、秘密厳守で話ができるため、相談しやすいです。担任の先生に言いにくいこともうまく伝えてくださるので、活用してみてくださいね。
担任の先生経由で申し込みをすることになると思います。
給食が食べられないものが多いこと、専門家の先生に診てもらいたいけど、どこに相談していいかわからないからアドバイスをもらいたい…など、差し支えない内容で申し込みましょう。
給食の代わりにお弁当をもっていくには?
あまりにも食べられなくて体調がすぐれない、体重が増えずにいる、給食が嫌で学校に行きたくない…そんな時はお弁当を持参できないか相談してみてください。
アレルギーがある場合だとお弁当持参は許可されやすいのですが、偏食だと許可してくれない場合もあります。
そういう場合は、小児科や心療内科など子供の状況を理解してくれる専門家を受診の上、診断書が出してもらえるか聞いてくださいね。
いずれにせよ、子供の気持ちを一番にして解決できる方法を選んでね
食べること自体に苦痛を感じている場合(会食恐怖症など)は、心療内科で診てもらった上で、別室で食べるなどの対応をとってもらえるように相談しましょう。
わが家では中学校入学時に栄養教諭の先生に相談して、診断書がなくてもお弁当を持参する選択も可能であることを聞きました。
担任の先生よりも栄養教諭の先生に相談すると早く話がすすむことがあるので、あなたの学校の対応に応じて、いろいろな人に相談してくださいね。
日本でもいろいろな国出身の人が住んでいます。
その中で、配慮を必要とする宗教の給食提供について(※7)
「弁当の持参を認めている」
とした教育委員会の数が14(20市教育委員会中)と7割が許可されています。
また、私の住む市の給食に対する方針が「アレルギー以外での対応」も始まる(2024年度~)ことになり、以下のようなお知らせをもらいました。
赤枠の部分の対応は今までなかったので、現代の状況に合わせた対応をすることが増えていくのではないでしょうか。
◇食物アレルギー以外の場合
- 校内で対応できる方法を考えます。
- 卒業や転出などで学校が変更になった場合、給食の対応内容が変わる場合があります。ご理解ください。
- 医療機関が記入する「学校生活管理指導表」の提出が必要になる場合があります。
こういった教育委員会単位での対応例がない場合でも、こういった対応をしようといっている自治体もあることを学校側に伝えて、あなたのお子さんが「ストレスなく」「笑顔で」給食を楽しめるように、参考にしてくださいね。
まとめ:子供が食事を楽しむために
ランチルームなど、他のクラスや学年と一緒に食べることができる場所がある学校もあります。しかし、コロナ禍以降はそれぞれの教室という閉鎖空間で給食をとる状態がまだ続いている学校も多いでしょう。
どうしても「時間内で片付けまで」「食べ残しを減らす」「アレルギーのある子への配慮」など、担任の先生1人だけでは対応しきれないことがあります。
担任以外の先生や周りの専門家など助けてもらえる人に相談して、お子さんの「食べれた」を増やしてあげてくださいね。
※1)「人口推計」(総務省統計局)
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2022np/index.html 結果の要約
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html より
※2)「食品ロスの推計結果(令和3年度)」(環境省)https://www.env.go.jp/press/press_01689.html より
※3)※1、2より計算[食品ロス量(令和3年)÷ 人口推計(令和3年6月)÷ 365日]
※4)福井の米屋「【早見表】ご飯1杯の値段 (お茶碗サイズ別)」より
※5)「損をしてでも他人の足を引っ張りたい」日本人の”底意地の悪さ”が世界で突出している根本原因 他人の足を引っ張る行動が組織の秩序を保つ(PRESIDENT WOMAN)より
※6)「なぜ日本はいじめが多いのか? 誰も語らない要因」より
※7)総務省「宗教的配慮を要する外国人の受入環境整備等」より